シングルマザーの三兄弟国公立医学部現役合格日記

この春、二人の兄に続いて末っ子の三男が某国立大学医学部に入学。でも一番驚いているのは母親の私。なんでお前たちが現役で医学部に受かるんだ?三人三様のドタバタの医学部受験を振り返って。

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医学部受験 地域枠入試を考える

医学部には 地域枠入試という独特のシステムがあるのはご存じですか?


「地域枠入試」とは、医師不足や診療科の偏在が問題となっている地域で、将来、地元の医療を支えてくれる受験生のために行われる医学部特有の入学試験です。



地域医療への貢献などと銘打って、主に医師の足りない地方で医師不足の解消のために行われています。



地域枠入試の合格者には自治体から奨学金が給付されます
これは貸与で、返還義務があります
9年間、行政が指示する医療機関で働けば、返還義務がなくなります
そうでなければ、通常10%以上の利息がかかります。
奨学金の額は自治体ごと違いますが、授業料+生活費10万以上
国公立大学の場合、6年間の授業料が350万円程度なので、卒業までに1000万を軽く超える借金を背負わされます。


順天堂など私立の医学部の授業料を支給する自治体もあり、その場合はさらに高額です


指定する医療機関というのは各県によってさまざまで
研修医のうちは県庁所在地の医療センターや県立病院などいわゆる中核病院で勤務できますが、その後はかなり田舎のどさ周りに近いような病院に派遣されることもあります


派遣先は地域入試の種類や各県の制度によりさまざまなので一概には言えません


長男が卒業したA医大は地域枠に2種類あります
どさまわりパターンのと
むしろ県内の主要な一流病院や大学病院で研修ができるので一般枠より人気が高く
入るのも同等かやや難しいというものと



各大学や自治体によって内容が千差万別であるとしたうえで


私はこれはかなり問題のある制度ではないかと思っています



わたしの知人(シングルマザー)の娘さんですが
某国立医科大学の地域枠で入学、奨学金を受け取り
親からの援助を受けず自力で大学を卒業しました


その娘さんが卒業後2年目に妊娠し、出産
当然その県指定の病院で勤務を続けなくてはなりません
ただ、夫も、子育てであてにできるお母さんも首都圏在住


夫と同居して研修できる病院を探しましたが
地域枠の縛りがあるので近くの病院では研修を受け入れてもらえない


たとえ奨学金を一括で返せたとしても
受け入れてくれる研修病院がないのです


医者は免許があるだけではだめで
初期研修で2年、その後専門医を取るのに最低で5年
専門研修ができないということは
臨床医としての将来を絶たれたと言っても過言ではない
(もちろんいろんな働き方がありますが)
専門医を取るまで5年間、一人で赤ん坊を育てろと言うことでしょうか
それとも、地域枠なのに妊娠出産してしまった彼女に非があるのでしょうか?


厚労省は地域枠を外れて、地元以外の病院で働こうとする医師を雇用しないように
病院に通知を出しているそうです
これを破ってマッチングで地域枠の研修医を受け入れた病院は、補助金の減額や研修医の採用人数の減員という処置が待っていますので、病院側も採用をためらいます
いわゆるブラックリストに載ってしまうのです


お金を一括返済して、契約から逃れる人が一定数いたのは事実で
制度が形骸化しないよう
圧力を強めようとしてるのでしょう



今は特に専門医制度になっているので、厚労省の息のかかった基幹病院での研修ができないと、専門医を取るのは非常に難しい


こんな身売りのような制度で、若者の将来を縛るのはおかしいのではないか


もちろん、地方の医師不足は深刻です
何としても医師を確保したい自治体の切迫感は理解できる


ただそれはもっと医療者全体(私も含めてですが)
もしくは国として考えていくべきことで


医師を志す若者だけに負担させるのは理不尽です


地域枠は確かに、高校からの推薦があったり、一般枠より少し入りやすかったりします
もちろん受験生は制度の説明を受け、宣誓書にサインもします


でも人生にはいろいろなことがある
先ほどのお嬢さんのように、妊娠や出産
さらには病気になったり事故にあうこともあります


入学時は地域医療がやりたいと思っていても、6年間のうちに適性が変わることもある
地域枠には地方勤務どころか救急や産婦人科など、専門分野すら固定されてしまうものもある(感染症専門医の地域枠という制度もできました)


これを18歳の高校生に判断させ責任を負わせるのは、あまりに酷です
医学部がいくら医師養成学校だからといって
他の学部ではあり得ない制度です


だって約束でしょと言われるかもしれませんが



医師のキャリアのことなど何も知らない受験生に
その働き方やさらには専門医制度を
きちんと理解し、賢明な判断をしろというほうが無理な話です



実は昔から、医療界には同じような制度がありました


看護学生に奨学金や学費を出し、卒後に決まった年限病院に勤務させる
いわゆる「お礼奉公」
これで経済的に恵まれない家庭のお子さんでも、看護師になることができました


自治医大などもこれに類する大学です


もともとその地方の出身の学生さんが
どうしても医師になりたいが
学力がやや不安、浪人できないなどの理由で
事情をよく理解したうえで利用するのはいいですが



単に入りやすい、奨学金がもらえるなどの理由で
選んでしまうのはリスクが多すぎる


シングルマザーなど経済的に厳しい家庭であっても


国公立大学には授業料免除の制度がありますし
支援機構の奨学金も医師になれば余裕をもって返済できます


地域枠で自分の将来をせばめてもいいのか
よく考えてほしいです


約束してしまったから、奨学金をもらってしまったからと
不満や不安があっても
当事者の医学生や医師はなかなか声を上げにくいようです


それ以上に問題なのが 医療界と厚労省ですね
あまりに封建的で旧態依然としています


制度自体を全否定するつもりはありませんが
もう少し個人の事情も斟酌した
血の通った制度にしていかないと、支持は得られない


何とかならないんでしょうか・・・

えー三男お前もか また医学部?

次男の受験が終わった時点で
三男は高校2年生
まあ普通なら、そろそろ受験も考え出す頃なのでしょうが
通っている高校のせいもあり


三男はのんびりムード
わたしの方も、体調がかなり回復
最後の一人ということもあり
緊張感ゼロ


まあ、好きな大学行けばいいんじゃない


1人ぐらい浪人してもいいか


などと、とんでもないことまで思い始め


上2人の時との違いに自分でもビックリ


生まれ順と母親の精神状態が
ここまで受験に影響するのですね


実際
三男が何学部に行きたいのか
さらに言うと
文系か理系なのかさえ
3年生になるまで知りませんでした


T大附属高校は
最後まで文系か理系かの区別がありません
クラスは1年からのもちあがり


3年生になって初めて、選択授業制になり


数Ⅲや物理を選択しているのを見て
やっと
あーこいつも理系かと気づいたのです


それまで
英語が比較的得意
暇さえあれば
ドストエフスキー全集だの
ハイデッカーの存在と時間
を読みふけり


小説や詩を書いてこっそり
投稿もしていたようで
もちろん一度も見せてはくれませんが


てっきりこいつだけは
文系に行ってくれるものと


わたしの家は医師家系ではありません
両親も親戚も医療とは無縁
元の夫の家は農家です


ただ、私の弟は医師
夫も医師で
子どももが2人医学部となると
どっちを向いても医者ばかり


つまらない


専門バカにありがちで
家庭の会話といったら


解剖実習のご遺体の話とか
何科を選んだらトラブルが少ないかとか
今日診察した変な患者の話とか
そんな話ばかりで


文系の子が欲しい


経済とか法学部とか
なんてインテリジェンス


文一とは言わないまでも
一橋とか早稲田とか
おじいちゃんのように外語大でもいいわね
と私の夢は膨らんでいたのに


えー三男、お前もか
医者はこれ以上要らないよ
我が家のリスク分散を考えても
君だけは、違う道に進んで欲しい


これはわたしの本心でした


医者はわたしも含め
経済や社会常識に疎いひとが多いのです


円高のときは
ドルを買えばいいのか売ればいいのか
投資信託も為替ヘッジも知らず
税制度も複雑でわからない


自分の給与明細の読み方すら無頓着


そんな時
軽やかに
母さん、
社会の仕組みはこうなっているんだよ
と教えてくれる賢い文系の息子
あこがれでした



三男が医学部を志望していることに
なんとなく気づいたのは
3年生の夏ごろです

兄弟3人 パンツもシャツも共用

医学部受験とは関係ありませんが
子どもたちの小さいころの子育ての話を少し


何しろいい加減な子育てで
真面目なお母さんが聞いたら、卒倒してしまうかも・・・


まずは共用パンツの話


「お母さん、ダイスケのうちは兄ちゃんとパンツが別々なんだって。可笑しいよなあ」


泊りがけで友だちの家に遊びに行ってきた次男がふともらした一言
私はふいを突かれたようで少しドキッとした。
そして何気ない風を装ってこう答える。


「ああ、いろんなおうちがあるからね。ダイスケ君のところはおしゃれなのよ」


そう言いながら「来るべき時が来た」と思った。
もちろん大げさに言えばなのだけれども。


中学生になった次男が初めて行った友人宅へのお泊り。仲良しの陸上部仲間が六人もそろってとても楽しかったようだ。
うちの二倍はある大画面のテレビでゲームをしたとか、
お母さんが作ってくれたキャベツの皮で肉を包んだスープがとてもおいしかったとか
(それはロールキャベツというのだと教えてやったのだが)
食後にフルーツがたくさん載ったケーキが出て、あとでお母さんの手作りだと聞いて信じられなかったなど


おとぎの国を見てきたように顔を上気させてしゃべり続ける次男が不思議そうに言ったパンツの話
私は恥ずかしいようなそれでいてつい吹き出してしまいそうな複雑な気持ちになった。


「うちは兄弟三人パンツが同じだってことはあんまり言わないほうがいいかもね。人それぞれだから」
その時のちょっとけげんそうな次男の顔が忘れられない。


 何もこころしてそうしたわけではない


兄弟三人の年が近くみな男の子だったので、気が付いたらそうなっていた。
と言ったら語弊があるか・・・
おむつが外れて次々パンツをはくようになったころ、子どもたちの体格にあまり差がなかったので分ける必要性がなかったのだ。


普通ならいくらサイズが似ていても兄弟の下着や洋服はきちんと分けて、それぞれのタンスなり衣装ケースにしまうのだろうが、私はその手間を惜しんだ。


というのもその頃三人が通っていた保育園が恐ろしく頻繁に着替えをさせるところだったからだ。
昼食やおやつの前後、外遊びの後、お昼寝の後と一日に何度も着替えさせる。


三人分の山のような洗濯物を毎日持ち帰って
洗ってベランダに干して出かけ、帰ってから取り込んで、たたんでタンスにしまう。
翌朝また洋服と下着をそれぞれ五組ずつ取り出して保育園に持っていき、
それぞれのにロッカーに置いてくる。


書いているだけで今でもため息が出そうなこの作業が不毛に思えてならなかった。


そこで私は脱衣所を広く改造して洗濯機と物干し台、子どもたちの衣類を置くための背の高いスチールラックを一か所に配置できるようにした。


洗ったものをその場で干し乾いたらたたんで(正しくは二つ折りにして)
ラックに並べた大き目のかごにどんどん放りこんでいく。
かごは子どもごとには分けず、
パンツ、シャツ、靴下、上着、ズボン、パジャマなどとした。


要するに全部共用だ


こうすると雨でも夜でも洗濯ができるし、洗う、干す、しまうが一か所で済むようになる。


ちまちました下着をたたんだり、子どもごとに衣類を仕分けたり、保育園用にそれぞれ枚数分そろえる面倒が省けかなり楽になった



保育園ではすべての持ち物に記名が要った。
衣服はもちろん下着もシーツもタオルも、お弁当も時間外保育の時に持っていくおやつも、ゴミを入れるビニール袋から紙おむつに至るまですべてに名前を書く。


ある日保護者会で保母さんからこんな注意があった。


「最近ご兄弟のおさがりを、名前をそのままでもってくるお母さんがいます。
職員はすべてのお子さんの兄弟関係を把握しているわけではないので、きちんと本人の名前に書き直してください」


もっともな話だが、さあどうしようかと困ってしまった。とりあえず記名はしてあったが誰か一人の名前を適当に書いて使いまわしているのだから。
いい方法が思いつかないので、とりあえずすべてのパンツやシャツ
「やまざき しゅんすけ ゆうじ しょうた」(仮名です)
全員の名前を黒マジックで書いた。


こどもの小さなパンツなどはこの呪文のような文字だけでいっぱいになってしまった


これを見た保母さんたちはいったいどう思っていたのだろうか。特に意見をされたわけでもなく過ぎてしまったので、今となってはわからない。


つづく